中等症患者の入院制限方針 与野党から撤回要求 首相は否定「丁寧に説明」:東京新聞 TOKYO Web

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☆☆☆:議論用ではない
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Aug 4, 2021 10:53 PM
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新型コロナウイルス患者の入院を制限し、重症者以外は原則自宅療養とする政府の方針転換に関し、自民党は4日、党会合で撤回を求めることを決めた。公明党は衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、撤回を含めた再検討を訴え、立憲民主、共産、国民民主の野党各党も撤回要求で一致した。菅義偉首相は官邸で記者団に「病床を一定程度空かせて、緊急な方に対応しようということだ。丁寧に説明して理解してもらう」と撤回しない考えを強調した。(井上峻輔)
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厚労省は3日付で、中等症患者を自宅療養とする具体的な判断基準を政府として示さないまま、入院制限方針を都道府県などに通知したばかり。全国的に感染が急拡大する中、適切な治療を受けられずに自宅で重篤化する懸念が国民や医療関係者の間で高まったことで、与野党から異論が噴出する異例の事態となった。
首相は入院制限方針の対象について「東京や首都圏など爆発的感染拡大が生じている地域であり、全国一律ではない」と説明。感染爆発を予見できなかったのかを問われたのに対しては、デルタ株の感染力を1.5倍程度と想定していたが「それをはるかに超える状況ではないか」と述べた。

◆尾身氏「相談や議論していない」

政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が衆院厚労委で、政府方針に関して「相談や議論はしていない」と明かした。それに対し、首相は「厚労省で必要な相談をすべきだった」と対応の拙さを認めた。
衆院厚労委では、公明党の高木美智代氏が「酸素吸入が必要な中等症の患者を自宅で診るなんてあり得ない。撤回も含めて検討し直していただきたい」と迫った。立憲民主党の長妻昭氏も政府方針を「人災だ」と追及し、政府が対応を誤って病床逼迫を招いたとして田村憲久厚労相に謝罪を求めた。
田村氏は、入院制限方針で在宅患者への処置が想定通りに進まなければ「また元へ戻し、しっかりと(中等症患者も病院に)入ってもらえばいい」と指摘。病床確保のための対応であるとして、うまくいかなければ見直しもあり得るとの考えを示した。
共産党の宮本徹氏は、中等症患者の一部が自宅療養になることで、病状悪化への対応が遅れる可能性を指摘。田村氏は「マンパワーは無尽蔵ではない」と限界があることを認めた。
日本が新型コロナウイルス禍に見舞われてから、約1年半。東京都内に住むひとり親の40代女性は「コロナでどん底を見た。『ステイホーム』は地獄だった」と語る。今も生活は苦しい。(柚木まり)
女性の家族を直撃したのは昨年2月27日、当時の安倍晋三首相が唐突に要請した小中高校の全国一斉休校だ。中学生の長男、小学校低学年の長女と3人暮らし。派遣社員として働いていたコールセンターは在宅勤務が難しく、子どもを自宅に残して出勤するわけにもいかない。有給休暇の取得で急場をしのいだが、勤務先から「いつ復帰できるのか」と繰り返し聞かれ、居づらくなって5月の大型連休明けに退職した。

◆ひとり親の子育て…職探し難航

長女の小学校が通常の授業に戻った10月、職探しを再開したが、子育て中のひとり親という立場が敬遠されて難航。今年1月に新たな職を得たものの、東京都への緊急事態宣言の再発令で働き始めは3月にずれ込んだ。月給は前職の半分の約6万円。無収入の期間は1年近くに及び、子どもたちには食パンと水道水で空腹を満たしてもらった。
一斉休校は、首相官邸が主導して猶予期間も短く、全国の学校や家庭に混乱が広がった。関係省庁との事前準備や専門家を交えた本格的な議論もなく、影響が大きい中小・零細事業者や子育て世帯への支援策の検討は後手に回った。安倍氏自身、休校発表後になって「十分な説明がなかったのはその通りだ」と認めた。

◆「政治に救おうという積極的な姿勢が見えない」

貧困家庭の学習支援に取り組み、コロナ禍で食料の無償提供も始めたNPO法人「キッズドア」(東京都中央区)の渡辺由美子理事長は「今も一斉休校の影響はある。食べるものがない子どもたちがいるのに、政治に救おうという積極的な姿勢が見えない」と政府の対応に憤る。
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政府が昨年、子育て世帯の支援策を実施したのは、一斉休校に続いて4月に初の緊急事態宣言を発令した後。児童手当を受給する子ども1人あたり1万円の給付金などを実行した。キッズドアは保護者が休職・離職せざるを得ない状況に追い込まれているとして、安倍政権から菅政権に代わった後も対策の充実を何度も要請。困窮世帯への臨時特別給付金など複数の支援策につながった。

◆支援先の3分の2が年収200万円未満

ただ、いずれも単発で、低所得世帯には一時しのぎにしかならない。キッズドアが支援先の家庭に調査したところ、約3分の2が年収200万円未満。学校はコロナ下で2度目の夏休みを迎え、給食がなくなるため子どもたちの体重減も懸念される。
支援を受けた子どもたちや家族から届いた感謝のメッセージカード
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「ごはんありがとう」「おいしいものを食べると笑顔になれる」―。キッズドアには、食料を届けた家庭から、お礼のメッセージカードが続々と寄せられている。それだけ困窮していることの表れでもあり、渡辺理事長は「東京五輪にかまけて、政府は他のことは何もやらなくていいと思っているのか。私たちが言わなければ、絶望してしまう家庭がいっぱいある。声を上げ続けないといけない」と訴える。
自民党本部=2016年10月、東京・永田町
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自民党は4日、新型コロナウイルス感染症対策本部などの合同会議を開き、政府によるコロナ患者の入院制限方針について、撤回を求めることを決めた。公明党幹部は衆院厚生労働委員会で、方針撤回を含めた再検討を要求。政府が2日に決定した方針を与党がそろって見直しを迫る異例の事態となった。厚労省は方針を自治体に正式通知したが、都道府県が求めていた入院の具体的な判断基準は示さなかった。東京都がつくる基準を尊重する方向で、現場の自治体に任せた形だ。
医療現場を担う自治体に加え、与党からの異論にも直面。方針練り直しを迫られる可能性がある。
菅義偉首相
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菅首相は、新型コロナウイルスの急激な感染拡大を踏まえ、夏の帰省や旅行に加え、不要不急の外出を控えるよう呼び掛けた。(共同)
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