焦点: 崩壊寸前のイラン核合意、ウラン濃縮とは何か | ロイター

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Jan 20, 2021 10:28 PM
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[5日 ロイター] - イランを巡る情勢が急速に悪化している。引き金となったのは、2018年にトランプ米大統領が「イラン核合意」からの離脱を表明したこと。対抗措置として、イランは15年の合意で制限された範囲を超えるウラン濃縮活動を再開した。濃縮度の上限3.67%を破棄、20%に引き上げることも視野に入れている。
崩壊寸前の核合意はイランに何を要求しているのか。その基本を振り返るとともに、発電や核兵器開発に必要なウラン濃縮について解説する。
イラン核合意とは
正式名称は包括的共同作業計画(JCPOA)。オバマ前米大統領の外交政策の中で、重要なレガシーの一つと考えられている。イラン政府が核兵器に転用できる生産活動をしない見返りに、国連による制裁の大半を解除することで、イランと複数の主要国が合意した。
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トランプ大統領が核合意から離脱し、経済制裁を再開すると表明してから1年後、イランは合意の一部履行を停止し、ウランの濃縮度を規定水準以上に引き上げると表明した。
イラン政府は核合意の当事国である英仏独に対し、核合意で定められたイランの経済的な恩恵を保護するよう要求。欧州連合(EU)はイランに対し、合意の履行義務を果たすように強く要請した。
低濃縮ウラン
天然ウランには核分裂を起こしやすいウラン235(U235)が約0.7%含まれる。原子炉や核兵器に使うには、これを濃縮する必要がある。
イラン核合意は、15年間にわたり濃縮上限を3.67%に制限した。これは兵器級の濃縮レベル90%よりはるかに低い。
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核合意により、イランは15年間、遠心分離機に入れた六フッ化ウランを最高3.67%までしか濃縮できない。これは兵器級の90%、およびそれまでイランが行っていた20%の濃縮よりも格段に低い。
ウラン濃縮は、連結した複数の遠心分離機によって行われる。シリンダーが高速で回転することにより、より重いウラン238(U238)がU235と分離するプロセスを数百回繰り返す。この作業は大量の電力を要し、さらに大規模な施設も必要だ。
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貯蔵と濃縮
イラン核合意ではナタンズとフォルドにある核施設でウランの濃縮が認められているが、制限がある。10年間、「IR-1」と呼ばれる第1世代の遠心分離機しか使えず、数少ない高度な遠心分離機は濃縮ウランを貯蔵しない研究にのみ使用が許可されている。
また、3.67%に濃縮された六フッ化ウランの貯蔵は300キロまでに制限されている。
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イランは2015年時点で1万5000基の遠心分離機を保有していた。核合意を受け、ナタンズ核施設では5060基、フォルドでは1044基を使用することで合意した。いずれも効率性の低い旧式の遠心分離機だ。
2018年9月、イラン政府はより高度な遠心分離機を製造する施設の完成を発表。これに先立ち、同国の最高指導者ハメネイ師は、核合意が失敗に終わった場合に備え、国のウラン濃縮能力をてこ入れするように指示を出していた。
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核施設
核合意により、ナタンズの施設は制限のかかったウラン濃縮施設となり、フォルドの施設は安定同位体の製造など、濃縮以外の目的で遠心分離機を使う「核、物理、技術センター」となった。
アラクにある重水炉は、ウランよりも威力の大きなプルトニウムの生産を最小限にするための改造が求められた。炉心は撤去され、コンクリートで固められた。イランはアラクなどの施設で使う重水の製造は継続できるが、貯蔵は約130トンまでに制限されている。
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合意の下、IAEAは25年間にわたりウラン鉱山や工場を査察する。ナタンズとフォルドについては15年間にわたり毎日検査をすることができる。2015年以降、IAEAの四半期報告書ではイラン政府による違反は報告されていない。
参照:国際原子力機関(IAEA)、世界原子力協会(WNA)、米国科学者連盟(FAS)、原子力安全保障科学・政策研究所(NSSPI)、Globalsecurity.org、核脅威イニシアティブ(NTI)