入院制限「撤回」求め、異例の与野党共闘 政府独断に自民も不満爆発 見直し迫られる可能性も:東京新聞 TOKYO Web

★★★:バランスよく議論できる
★★☆:意見を吟味する
★☆☆:客観的情報
☆☆☆:議論用ではない
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Aug 4, 2021 10:48 PM
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新型コロナウイルス患者の入院対象を重症者らに限定する政府方針に対して4日、与野党から撤回を求める声が一斉に上がった。病床逼迫を回避するため、政府は重症化リスクが低いとされる患者の自宅療養を主流にしたい考え。だが、重症化するかどうかの判断は医師でも難しく、自宅療養の患者の命を危険にさらす懸念はぬぐえない。十分な説明がないままの急な方針転換だけに、見直しを迫られる可能性もある。(大野暢子、市川千晴、生島章弘)
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「デルタ株は大変な脅威だ。入院しなければならない人が入院できる対応ということを理解してほしい」 田村憲久厚生労働相は4日の衆院厚労委員会で、入院制限は必要な措置だと強調した。 もともと、ワクチン接種が進んで感染状況が落ち着けば、コロナ患者も季節性インフルエンザのように自宅療養を基本にするというのが政府の既定路線。暮らしや経済を日常に近づけるためで、官邸幹部は「患者の多くは若い人だから、中等症は入院させるという今までとは考え方を変えないといけない」と指摘する。 だが今回の入院制限は、甘い想定で病床逼迫の恐れが強まったためという正反対の理由だ。東京などでは、既に入院を希望しても待たされるケースが続出し、さらに増えることも予想されるが、菅義偉首相は4日、記者団に「国民の命と健康を守る、必要な医療を受けられるようにするため決定した」と強弁した。
デルタ株は昨年から各国で警戒の必要性が叫ばれており、衆院厚労委で立憲民主党の中島克仁氏は「専門家は再三、警鐘を鳴らしてきた。対応が後手後手だ」と批判。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長も「病院か自宅かの二者択一では絶対にだめだ」と訴え、主に中等症向けの宿泊療養施設の強化など、すぐに医療に結びつく仕組みの充実が必要だと力説した。 「現実には東京の問題なのに、全国一律に発信したことは大きな間違いだ。一切(事前の)相談がなく官邸が決めたことで、困惑している」 政府の入院制限に対し、自民党は党会合で撤回を求めることを決め、内容を記者団に説明した古川俊治参院議員はそう強調した。 衆院厚労委では、公明党の高木美智代氏が撤回を含めた見直しを要求。立民、共産、国民民主3党も撤回を求めることで一致し、与野党の足並みがそろう異例の展開となった。
失策続きともいえる政府のコロナ対策に、与党はいら立ちを強めている。西村康稔経済再生担当相が先月、酒の提供を続ける飲食店に金融機関や酒類販売業者を通じて「圧力」をかける考えを明らかにした際には、業界団体からの突き上げを受けた自民党が見直しを要求。発表から1週間もたたず、全面的に撤回させた経緯がある。 秋までに行われる衆院選を控え、世論の動向に神経をとがらせる与党は、政策決定への関与を強化。先月末、コロナ対策の情報共有を目的に政府との新たな連絡会議を設置した。だが、今回も「病床のオペレーション(運用)の話だから」(田村氏)との理由で尾身氏らにも相談せず、政府の独断専行に与党の不満は高まるばかりだ。
4日に行われた衆院厚生労働委員会の論戦の詳報は次の通り。
木村弥生氏(自民)在宅の(中等症患者の)見守り体制を守るには、訪問看護師の存在が不可欠だ。
田村憲久厚生労働相 緊急の訪問看護には、診療報酬を加算し1回5200円にする。訪問看護の重要性を認識し、対応したい。
高木美智代氏(公明)酸素吸入が必要な中等症の患者を自宅で診ることはありえない。撤回も含め検討し直してほしい。
田村氏 呼吸管理している方を自宅に戻すことはありえない。軽症で入院中の高齢者や基礎疾患のある方で、症状があまりない方をどうするかについて考えた中での今回の対応だ。
長妻昭氏(立民)政府は入院者を絞る方針転換をした。まず国民に謝罪すべきだった。
田村氏 医療資源は短期間に急に増えない。重症化のリスクが高い方と重症者には、病床を確保しなければならない。先手を打って対応している。最悪の状態を想定しないと、助かる命も助からなくなる。
長妻氏 入院すべき方が入院できない状況だ。
田村氏 在宅で悪化したときに対応できる体制を組み、入院者の病床を確保する。もし、そうならなければ方針を元に戻して、入っていただければいい。
長妻氏(呼吸不全がない)中等症1は原則自宅なのか。
田村氏 東京都の会議で検討し、基準を作っているようだ。在宅にする判断は担当の医師がする。
長妻氏 基準を事前に決めておくべきではないか。東京などの感染増加とオリンピックの関係をどうとらえる。
尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長 オリンピックの開催が、人々の意識に与えた影響はあるのではないか。
早稲田夕季氏(立民)自宅療養へ方針転換する前に、政府は分科会や尾身氏に意見を聞いたのか。
尾身氏 政府とは毎日のように相談、連絡、協議しているが、この件に関しては相談や議論をしたことはない。
早稲田氏 誰が決めたのか。
田村氏 政府が決めた。病床が逼迫(ひっぱく)する中でどう対応するかという問題なので、政府の中で検討し判断した。
早稲田氏 医療関係者や自治体の意見を聞く必要はないということだと理解した。
田村氏 感染拡大しつつある中で、命を守るための対応だと理解してほしい。
中島克仁氏(立民)軽症と中等症の判断や、入院の可否は誰が判断するのか。在宅で管理する医師はどう確保するのか。
田村氏 スマホのアプリで日々の健康観察を行う。悪化の兆候があれば往診や遠隔診療などを、東京都内では多くの区が対応している。患者数が増えてくれば、医師の数が限られるので(対応が)難しい部分は出てくると思う。
山井和則氏(立民)今回の見直しで、入院できず自宅で亡くなる方が出たら、責任を取るか。
田村氏 今までと同じ意識で対応してはいけない中で今回の判断をした。1人でも多くの国民の健康と命を守るのがわれわれの役割だ。
山井氏 中等症の方が入院できなくなったら、亡くなる命が確実に増える。方針転換を撤回すべきではないか。
田村氏 誤解がある。肺炎症状があって苦しいという方は、中等症1であっても入院してもらう。
山井氏 それは机上の空論だ。都道府県は重症化リスクをどう判断するのか苦しんでいる。中等症で自宅で亡くなる方のリスクが高まるのではないか。
尾身氏 今の入院の中心は、40歳から50歳で高濃度酸素が必要な(呼吸不全のある)中等症2の人が増えている。かなり濃厚な治療が必要だ。医療の現場は、限界に来ているという感覚を持っていると思う。今求められるのは3つの柱だ。1つは医療全体。今までは病院中心だが、これからは開業医の支援や訪問看護、往診を医療全体で強化する。2点目は宿泊の療養施設の強化。3つ目は自宅療養の軽症者が重症化した場合、すぐに医療に結び付けるシステムだ。
山井氏 東京都で1日に1万人が(新たに)感染する可能性はあるか。
尾身氏 最悪の場合にはそういうこともある。いろんな幅があり、来週ぐらいにもう少し低い6000、7000、8000人というところもある。急に下がることはないと思う。
宮本徹氏(共産)中等症1の方の誰が悪化するかは判別がつかない。自宅療養が原則になったら、治療のスタートが遅れてしまうのではないか。
田村氏 健康観察のみならず、訪問診療、往診、オンライン診療をしっかりやらなければいけない。体制を東京都と話し合いながら組んでもらっている。
青山雅幸氏(維新)東京都の死亡者数は全然増えていない。
田村氏 ワクチン接種が高齢者で進んでいるので、重症化や亡くなる方が減る効果はあると思う。
青山氏 今の対策は効果がない。
尾身氏 緊急事態宣言の効果が、昨年4月に比べて人々へのインパクトが低くなっているのは事実だと思う。宣言を出したときに、どんなメッセージ、措置、内容にするか。詳細に議論を進めるべきだ。
高井崇志氏(国民)ワクチンよりも抗原検査を徹底すべきだ。飲食店に入る前に検査すれば、十分で結果が出る。諸外国は無償でやっている。国が一定程度を無償で配れば価格は下がるはずだ。
田村氏 薬事承認している抗原検査キットは鼻腔(びくう)。唾液キットは薬事承認されていない。制度としてどうなのか。偽陰性の可能性も理解いただいた上で使わなければいけない。ワクチン接種をとにかく進めたい。50歳代にある程度進むと、状況が変わってくる。