コロナによる死者が10万人を超えた（欧州で最大）イギリスではボリス・ジョンソン首相に厳しい目が向けられている Photo: Leon Neal/Getty Images
なぜ誰も止めなかったのか？
新型コロナウイルスの感染拡大を止めるには、「女性だけ」がステイホームする必要がある──少なくとも、イギリスの国民保健サービス（NHS）のキャンペーン広告を見た人々はそう解釈した。
イギリス政府が運営する医療システムであるNHSが先週、国民に外出自粛を呼びかける広告を発表した。そこには家の中のシーンが4つ描かれている。1つは女性が男性のパートナーと一緒にソファでくつろいでいるイラスト。そして残り3つは、女性だけが子供の世話をしたり家の掃除をしたりするものだ。
そのステレオタイプに満ちた広告が1月27日の夜にNHSのフェイスブックに投稿されると、「性差別だ」とソーシャルメディアで非難の嵐が巻き起こった。
なかでも最も多かった反応は、「これで大丈夫だと誰が思ったのか？」というものだ。
行動学の研究者であるプラギャ・アガルウォルは「これは誰が作って、誰が承認したの？」とツイート。「ホームスクールも掃除も子育ても女性の仕事だという先入観を強化するもの。男性は外で戦争でも戦っているのかしら？」と皮肉った。
Who made this? And who approved it? Heteronormative. Reinforcing the view that it is a woman’s job to homeschool, clean, do the childcare. Are the men out there fighting a war or something? pic.twitter.com/Q7tHtIUx4m— Dr. Pragya Agarwal (@DrPragyaAgarwal) January 28, 2021
批判を受けて、ボリス・ジョンソン首相は「これは政府の女性に対する見方を反映していないと、はっきりさせておきたい」と声明を出し、問題の広告を取り下げることにした。
いまだ1950年代の価値観か！
しかし、広告が削除された後も、批判の声はやまなかった。
労働党のイヴェット・クーパー議員は「これが我が国の女性や少女たちに向けた政府からのメッセージ！」とツイート。「2021年なのに、1950年代のセクシズムがものすごい勢いで拡散している」と、コロナ禍にかけて批判した。
A message from the Government to the nation’s women and girls!!In 2021.Turns out 1950s sexism is spreading fast too. pic.twitter.com/n6pHIz7cwu— Yvette Cooper (@YvetteCooperMP) January 28, 2021
イギリスでは1月初旬以降、新規感染者の数は減少しているが、専門家らは変異株の出現によって警戒感を強めている。
世界的に見れば、このパンデミックの影響を受けているのは圧倒的に女性のほうであり、女性の失職率は男性の1.8倍になっている（マッキンゼー・グローバル・インスティテュート調べ）。ケンブリッジ大学の調査でも、イギリスのロックダウンの影響を最も受けているのは女性と高卒者であることが示されている。
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