香港の裁判所 民主活動家 黄之鋒氏 周庭氏に禁錮刑 | 香港 抗議活動 | NHKニュース

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Dec 3, 2020 11:06 PM
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香港の裁判所は、去年の大規模な抗議デモに関連し、無許可の集会への参加をあおった罪などで、民主活動家の黄之鋒氏に禁錮13か月半、周庭氏に禁錮10か月をそれぞれ言い渡しました。
香港の民主化運動への支援を国際社会に訴えてきた中心的な活動家が収監されることになり、各国からの批判が一層高まることが予想されます。
香港の民主派団体「香港衆志」の幹部だった、黄之鋒氏と周庭氏ら3人は、去年6月、大勢の市民が警察本部を取り囲んだ大規模な抗議デモに関連し、無許可の集会への参加をあおった罪などに問われ、11月23日、有罪の認定を受けていました。
香港の裁判所はきょう、「公共の秩序と安全を壊し、市民の生命と安全を脅かした」として、黄之鋒氏に禁錮13か月半、周庭氏に禁錮10か月をそれぞれ言い渡しました。
黄氏は6年前の大規模な抗議活動「雨傘運動」に関連して、実刑判決を受けて収監されたことがありますが、周氏が収監されるのは今回が初めてです。
また、周氏は、ことし8月に香港国家安全維持法に違反した疑いでも逮捕されていて、警察の捜査が続けられています。
ことし6月に施行された香港国家安全維持法のもと、政治活動に対する中国の統制が強まるなか、香港の民主化運動への支援を国際社会に訴えてきた中心的な活動家が収監されることになり、各国からの批判が一層高まることが予想されます。
黄之鋒氏や周庭氏は、11月23日に保釈を取り消されて以降、代理人を通じて、拘置施設での様子や心境、それに支持者に向けたメッセージをSNSで発信しています。
このうち黄氏は、「独房での幽閉は私の予想をはるかに超えている。本当に耐え難いものだ」と述べています。
そのうえで、「先が見えない状況に不安を抱いている人もいるかもしれないが、こうした痛みや苦しみが私たちの勇気、そして民主主義や正義を求める信念を力強いものにすると確信している。私たちの精神をおりの中に閉じ込めることはできない」と訴えています。
そして、「私と同じように、多くの活動家が訴訟や投獄に直面している。彼らに『一人ではない』ということを伝え続けてほしい」と支援を呼びかけています。
また、周庭氏も、代理人を通じて自身の状況を伝えていて、日本の支持者に向けては日本語でメッセージを寄せています。
拘置施設での生活については、12人の相部屋が割り当てられているとしたうえで、11月25日には、「皆さんの関心に感謝します。心配をかけて、ごめんなさい。私は留置所で元気です」と状況を伝えています。
その2日後の11月27日には、「日本の皆さん、たくさんの人が応援してくれていると聞いて、心が強くなりました。ありがとうございます」としたうえで、「私は一生懸命この環境に適応しようとしています。食欲はないけど、食べる努力もしています。乗り越えるためにはエネルギーを蓄えないといけないから」と前向きなことばをつづっています。
さらに、3日に、24歳の誕生日を迎えることにも触れ、「外に出られるかはわからないですけど、外で3日の誕生日を祝えることを願っています。寂しい時もありますが、頑張ります」としています。
一方で、11月29日には、「ここ数日、精神状態はあまりよくありません。気温が下がったせいもあるのかあまりよく眠れず、体の調子が悪いです。水曜日には禁固刑が下される可能性が高いということなので、今はとても不安です」と、胸の内を明かしていました。

周庭氏 肩を震わせてむせび泣く

裁判が始まると周庭氏は白いブラウスにベージュのカーディガン姿、黄之鋒氏は黒いジャケット姿で硬い表情を浮かべて法廷に入り、裁判官の判決文の読み上げにじっと耳を傾けていました。
周氏は疲れた表情で、時折、傍聴席のほうに目を向ける以外は、終始うつむいていて、肩を落として大きなため息をつく様子も見られました。
そして、裁判が終わると、肩を震わせてむせび泣いていました。
その目からは大粒の涙がこぼれ、手にしたタオルでぬぐっていました。
また、黄之鋒氏は、終始、顔を上げまっすぐ裁判官を見据えていました。
裁判が終わって退廷する際には、傍聴席に向かってこぶしを上げ「大変なことはわかっている。でも、みんなで一緒に頑張ろう」などと、声を上げました。
法廷には黄氏や周氏の友人らが傍聴に駆けつけ、黄氏らに対し「頑張ろう。出てくるのを待っている」などと声をかけていました。

友人や支持者は

裁判所には、黄氏や周氏の友人や支持者らが大勢集まり、裁判を傍聴したほか、廷内に入れない人たちは、外で結果を待ちました。
そして、判決の内容が伝えられるとどよめきとともに、悲鳴のような声も聞こえ、すすり泣く人もいました。
このうち、40代の女性は「公平でない判決だ。彼らは何も悪いことはしておらず、自由のために闘っただけなのに、重すぎる刑で不公平だ」と涙を浮かべながら、話していました。
また、18歳の女性は「刑が重すぎる。体を大事に、みんなが帰ってくるのを待っていると伝えたい」と話していました。
さらに、70代の女性は「将来ある若者たちに対して重すぎる刑だ。今の香港にはとても絶望しているが、いつか、香港に自由と民主主義がもたらされると願いたい」と話していました。

羅冠聡氏「判決はばかげている」

6年前の大規模な抗議活動、「雨傘運動」などで黄氏らと活動を共にし、現在はイギリスを拠点に活動を続ける羅冠聡氏はツイッターに「かつての仲間たちが収監されたことに衝撃を受けている。判決はばかげている」と投稿しました。
そして「香港に民主主義をもたらすことをただ願っただけの活動家に、またもや露骨な攻撃が行われた。中国当局は法にかなった主張を唱えている何万人ものデモ参加者を政治的に抑圧したのだ」と批判しました。
そして羅氏は「黄氏は過去にも収監されているが、今回は以前よりも期間が長い。今後も罪を押しつけられ、判決が積み重なると3人がいつ刑務所から出て来れるのか分からない」とし、「『1人ではないのだ』ということが伝わるようどうか彼らを支え、励ましてほしい」と呼びかけました。

英 ラーブ外相「香港の人々の権利と自由は守られるべきだ」

これについてイギリスのラーブ外相は、声明を発表し、「司法手続きは公正かつ公平でなければならず、香港の人々の権利と自由は守られるべきだ」と強調するとともに「香港と中国の当局に対し、反対派を抑圧するキャンペーンをやめるよう求める」と厳しく批判しました。

裁判後も100人ほどの支持者 黄氏と周氏を見送る

黄之鋒氏と周庭氏に判決が言い渡された裁判所の周辺には、裁判が終わったあとも100人ほどの支持者が残り、車の出入り口付近に集まりました。
そして、黄氏と周氏を乗せた大型車が相次いで裁判所を出ると、車に駆け寄りスマートフォンで明かりを照らしながら、「恐れずに闘おう」とか、「最後まで闘おう」などと声を上げて応援しました。
また、車に向かって周氏や黄氏らの釈放を求める意味の「フリー・アグネス」とか「フリー・ジョシュア」と書いた紙を掲げる人もいました。

周庭氏友人「香港のことを伝え続けたい」

香港出身の伯川星矢さん(28)は周氏の友人で、日本での講演会で通訳を務めるなど活動を支援してきました。
伯川さんは「何も間違ったことをしていないのにあまりにも重すぎるというのが率直な気持ちです。彼女は毎年、年末に日本に来ていましたが、しばらく会えなくなると思うと寂しくなります」と話していました。
そのうえで、「彼女が戻ってくるまでに私たちが香港のために何が出来るのか、問われていると思います。日本で暮らしながら何ができるのか考え、香港のことを伝え続けたい」と話していました。
また、周氏が裁判のあと肩を震わせてむせび泣いていたことについて「ふだん、泣かない人なので心が痛みました。刑務所の中での精神状態が心配ですが、このつらい時期をなんとか耐え抜いてほしい」と呼びかけていました。

タイのデモ参加者「怒りを覚える」

香港の民主化運動に後押しされ、東南アジアのタイで民主主義や王制改革を求めるデモを続ける若者たちからは非難の声が上がっています。
このうち、ゲードカノ・ウォンサーパクディーさん(23)は、黄氏と4年前からの知人で、同じ世代の香港の若者たちが厳しい状況の中でも声を上げ続け、タイのデモを支持する多くのメッセージをSNS上に投稿してくれたことに支えられてきたといいます。
ゲードカノさんは、「黄氏は未来を求める普通の男の子だ。独裁的な政権はいつも抗議活動を違法にしようとするし、私たちは同じような境遇にあると思う。自由を求めるために闘っているだけなのに、このような事態になり怒りを覚える」と話していました。
そのうえで、「香港の問題が消え去ることがないように声を上げ続けなければならない。わたしたちは香港の人たちといつもともにある」とエールを送っていました。

支援を呼びかけてきた北海道大学教授「関心を持ち続けてほしい」

香港の民主活動家で、北海道大学のフェローも務める民主活動家、周庭氏に香港の裁判所が無許可の集会への参加をあおった罪などで禁錮10か月を言い渡したことを受けて、支援を呼びかけてきた北海道大学の教授は、「香港で自由のために闘っている人たちへの関心を持ち続けてほしい」と訴えています。
周庭氏は、去年6月、大勢の市民が警察本部を取り囲んだ大規模な抗議デモに関連し、ほかの民主活動家2人とともに無許可の集会への参加をあおった罪などに問われ、香港の裁判所は2日、すでに有罪の認定を受けていた周氏に禁錮10か月を言い渡しました。
周氏は、香港の民主化運動への支援を国際社会に訴えてきた1人で、去年10月に北海道大学公共政策大学院の「フェロー」に就任し、学生たちと自由や民主主義の大切さを議論してもらうことが期待されていました。
署名活動などを通じて周氏らへの支援を呼びかけてきた北海道大学の遠藤乾教授は、「厳しい判決だと思う。発信力のある人に対し、見せしめのような形で厳罰を科しているのではないか。北海道へ来てもらうという望みも絶たれ、非常に残念に思っている」と述べました。
そのうえで、「外からできることは限られているが、香港の自由のために闘っている人たちに対し香港政府や中国政府が行っていることに関心を持ち続けることが大事だ」と訴えました。