「ホロコーストって何?」ユダヤ人虐殺の歴史を、米国の若者は恐ろしいほど知らなかった | クーリエ・ジャポン

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Jan 26, 2021 11:36 PM
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ホロコーストの犠牲者を追悼するイスラエルの国立記念館「ヤド・ヴァシェム」で、犠牲者の写真を見つめる男性 Photo: David Silverman / Getty Images

「アウシュヴィッツ」も知らない

日本に原爆が落ちたことを知らなかった──世界の若者にそう言われることと等しい衝撃を受ける統計が、昨年、アメリカで発表された。
「40歳以下のアメリカ人の10人に1人が『ホロコースト』という言葉に聞き覚えがないと答えた」と報じるのは「NBCニュース」だ。
米メディア「デザート・ニュース」によると「18歳から39歳までのアメリカ人1万人以上を対象とした全国調査をした結果、ホロコーストで殺されたユダヤ人の人数(600万人)を回答者の3分の2が知らなかった」という。
そして「回答者のうち48%が第二次世界大戦中に使われた強制収容所やゲットーの名前をひとつも挙げられず、11%がホロコーストはユダヤ人によって引き起こされたと信じていた」のだ。ユダヤ人がもっとも多いニューヨークに限定すると、その数は19%まで跳ね上がる。
恐ろしいことに、人類が20世紀に犯した最大の罪のひとつとも言えるホロコーストの歴史が、既にかすみつつあるのだ。
そもそもホロコーストとは、国家主導で行われた迫害・虐殺行為を指す。アドルフ・ヒトラー政権が引き起こしたこの大量虐殺で対象となったのは、反ユダヤ主義やホモフォビアをもとに「生物学的に劣っている」と決めつけられた人たちだ。ガス室、強制収容所、銃殺隊などが使われ、特にユダヤ人が「全滅」の対象となった。その結果、1945年までにヨーロッパで暮らすユダヤ人の3人に2人が殺されている。
ユダヤ人も多く暮らすアメリカのミレニアル世代やZ世代が、ホロコーストをどのように認識しているのか──海外メディアが報じたその統計結果は以下の通りだ。
■90%はホロコーストが起きたことを信じている。だが7%はよくわからないと答え、3%はホロコーストの歴史を否定した
■約4分の1(23%)が、ホロコーストの歴史は「神話である」、「誇張されている」、または「よくわからない」のいずれかで答えた
■8人に1人(12%)がホロコーストについて「聞いたことがない」、または「聞いたことがないと思う」と答えた
■44%が、最も悪名高い「アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所」を認識していた(ホロコーストの際、ヨーロッパにはこうした収容所やゲットーが4万以上あった)。「ベルゲン・ベルゼン強制収容所」を知っていたのはわずか3%のみ
■56%が、SNSや地域社会のどこかでナチスのシンボルを見たことがあると答えた
■49%がSNSなどでホロコーストを否定、あるいは歪曲した内容の投稿を見たことがあると答えた
■59%がホロコーストのようなことが再び起こる可能性があると考えていた
■22%がホロコーストは第一次世界大戦と関連していると考えていた。10%が「よくわからない」、5%が「南北戦争」、3%が「ベトナム戦争」と答えた
■64%が学校でホロコースト教育を義務化するべきだと答えた
■約70%がネオナチの思想を受け入れられないと答えた
「ここから得られる重要な学びは、これ以上時間を無駄にできないということです」と「NBCニュース」に語るのは、この調査を依頼した「Jewish Material Claims Against Germany(ユダヤ人対独物的請求会議)」の副会長であるグレッグ・シュナイダーだ。
「このトレンドがもう一世代続いてしまえば、恐ろしい歴史から学ぶべき重要な教訓が失われてしまうかもしれない」
前出の「デザート・ニュース」などは、この結果の背景にあるのは教育の不十分さであると指摘している。40歳以下の8人に1人が「ホロコーストという単語を知っているかもあやしい」という現状は、たしかに、教育の場でも深刻に受け止めるべきことだろう。
どんな歴史も時間の流れとともに少しずつ薄れてゆくものかもしれない。だがホロコーストに限らず、決して繰り返してはならない出来事は数多ある。その恐ろしさを忘れないよう手を尽くすことが、今生きている私たちの責務なのだろう。