ユヴァル・ノア・ハラリ「50年後、すべてが政府に監視されはじめた時期として現在は回顧される」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

★★★:バランスよく議論できる
★★☆:意見を吟味する
★☆☆:客観的情報
☆☆☆:議論用ではない
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ある特定のオピニオンが述べられる
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Nov 13, 2020 09:19 AM
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両論が併記される
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事実ベース
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立体的(多角的)
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考察的・思想的
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調査、データ、観察的
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パンデミック下で人々はウイルスに怯えながらも、その一方で経済は困窮し、私たちの生活はこれまでになく政府の監視下に置かれるという危機的状況を迎えている。そんな時代を生きる私たちが、雑音に惑わされず科学に基づいた現実を理解するには、どのような視点が必要なのか。 この度、60以上の言語に翻訳され1600万部以上を売り上げた世界的ベストセラー『サピエンス全史』の漫画が発売され、スペイン「エル・パイス」紙が著者のユヴァル・ノア・ハラリにインタビューした。 おそらく現在世界で最も人気のある歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が引き起こしている経済危機を前に、堅固たる医療制度の構築と国際協力の重要性を呼びかけている。 そんな彼は、いまだにスマートフォンを使いたがらない。「そのほうが、自分がもっと守られているように感じるんです」と、彼は言う。 刺しゅう入りの明るい色の靴下でわずかに遊び心を見せている以外、全身黒づくめで現れたハラリは、テルアビブにある海を臨むオフィスでインタビューに応じた。

良質な医療制度のために税金を払うべき

──ヘブライ大学で教授を務め、オックスフォード大学で博士号を取得したあなたが「漫画」ですか? このような表現方法はわかりやすく、読んでいて楽しいものです。パンデミックの渦中で、テクノロジーに関する知識を幅広い層に届けようとすることは、非常に大切です。陰謀論が生まれる余地を与えないようにするためです。 科学や現実を説明するのはとても複雑ですが、こうしているあいだにも「ビル・ゲイツが世界を支配するために自分の研究所でウイルスを作った」などという噂が出回っています。人々に興味を持ってもらえるようなコミュニケーションツールを、科学者たちが見出すことが不可欠なのです。 ──あなたは著作のなかで、いつも幅広い観点やパノラマ的なビジョンに基づくアプローチを用いています。それは目の前の現状を人々に示すためですか? 方法は、根本的な疑問を提起することから発生するものです。たとえば、大半の社会で男性が女性を支配してきたのはなぜでしょう? 16世紀のスペイン史のみを考察したとしても、その答えを出すことはできません。そこからわかることは、特定のときと場所にのみ当てはまる事象かもしれません。 ですから、さまざまな社会を専門とする人類学者と、さまざまな時代を専門とする考古学者から、情報を集めなければいけないのです。あらゆる断片を集めて初めて、私たちは一つの重要な問いに答えはじめることができるのです。 ──あなたはハイパーテクノロジー社会において、政治的な見方を変えることを提案していますね。 新たなモデルがどのようなものになるかをお尋ねだとしたら、私にはわかりません。けれども、そのモデルを発展させることは、緊急の課題です。テクノロジーの変化は、古いシステムを時代遅れにしています。 私たちに突きつけられている最大の挑戦は、人類を「侵略」することを可能にするシステムかもしれません。つまり、たくさんのデータを集めることで、外部のシステムが私たち自身以上に私たちのことに精通し、私たちを利用できるようになってしまうということです。 現在の政治経済の構造は、このようなテクノロジーが存在しなかった時代に構築されました。今、あらためて民主主義と経済システムを作り直すべきです。変わらずに存在しているのは、倫理とモラルをめぐる普遍的かつ絶対的な基盤です。それらは変化することがありません。 私が思うに、道徳とは法律を尊重することではなく、苦痛を軽減することです。手段は変化します。条件が変化するからです。20世紀には、自由民主主義が最良の政治システムでした。それは人間の苦痛を部分的に軽減しうる最も効果的なシステムだったからです。 100年後にどうなっているかはわかりませんが、新たな政治システムが必要となることでしょう。それが苦しみにある人たちを解放するための、より良いシステムであるといいのですが。 ──パンデミックへの対処方法としてあなたが主張しているように、今後は国際協力を強化していく必要があるのでしょうか? さらにあなたは、国際的なリーダーシップの欠如についても述べていますね。それはドナルド・トランプ(アメリカ)、ジャイール・ボルソナロ(ブラジル)、オルバン・ビクトル(ハンガリー)といった指導者による、ポピュリズム的なナショナリズムによって阻害されていると。 彼らはいつもイスラエルにやってくるんですよ(皮肉)。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、彼ら全員と友達です。 今回のパンデミックを通して、ワクチン開発を進めたりウイルスの拡大を阻止したりするためには、外国と協力するほうがいいということが私たちにはわかってきました。ですがトランプやボルソナロたちは、国際協力が愛国主義に反するとみなした場合、情報を渡しません。 愛国者であるとは、良質な医療制度を保ち、税金を払うことです。もしも大統領が億万長者で、年間750ドルしか税金を払っていないとしたら(米「ニューヨーク・タイムズ」紙が明かしたトランプの納税申告への言及)、彼は愛国者ではありません。 (ハラリと彼の夫で著作権代理人兼マネージャーのイツィク・ヤハフは、トランプ大統領が世界保健機関へのアメリカの拠出金を停止したあと、同機関に100万ドルを寄付している) ── 多くの人にとって、あなたの推論はケインズ主義的な干渉であるように思われるでしょう。 いいえ。それは20世紀半ばから共有されてきた考え方です。私たちの誰もが良質な医療制度を必要としており、そのためにお金を支払わなければなりません。新型コロナウイルスが、民営化志向を一掃してくれることを願います。公衆衛生の管理を、自由市場に委ねようなどと真剣に考える人がいるはずはありません。