世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度をグラフ化してみる(2010-2014年)(最新) - ガベージニュース

★★★:バランスよく議論できる
★★☆:意見を吟味する
★☆☆:客観的情報
☆☆☆:議論用ではない
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ある特定のオピニオンが述べられる
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May 11, 2020 12:13 AM
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両論が併記される
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事実ベース
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立体的(多角的)
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考察的・思想的
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複数のオピニオンが含まれる
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調査、データ、観察的
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人の価値観は個人ベースでも大きな違いを生じるが、同一環境下に置かれることで一定の同一性を示すことが多々ある。その仕切りの代表的な様式が「国家」。国毎にインフラの整備状況や法令、文化形態が違い、その環境下で長年暮らしていくうちに、価値観は国家単位で違いを見せるようになる。今回はその国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している【World Values Survey(世界価値観調査)】から、「主要国における新聞・雑誌やテレビ(要はマスコミ)に対する信頼度」について確認をしていくことにする。
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今調査結果は世界数十か国(80か国以上)が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000-2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものは5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。例えば直近の調査結果は2010年から2014年に渡って行われたものだが、現時点でフランスやイタリア、イギリスなどは調査結果が掲載されていない(現在も精査中で今後掲載される可能性はある)。
次に示すのは従来型メディアのうちテレビ、及び新聞・雑誌に対する信頼度。選択項目として「非常に信頼する」「やや信頼する」(以上肯定派)「あまり信頼しない」「全く信頼しない」(以上否定派)「わからない」「無回答」が用意されており、どれか一つを選択することになっている(「無回答」は選択する、というよりは結果的なもの)。
この選択肢のうち今回は「非常に信頼する」「やや信頼する」の肯定派を単純に加算して、その値から「あまり信頼しない」「全く信頼しない」の否定派の値を引き、各メディアへの信頼度(DI値)を算出することにした。つまりこのDI値が大きいほど、その国では対象メディアが信頼されていることを意味する。
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↑ 世界各国における新聞・雑誌への信頼度(2010-2014年)(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・全く信頼しない)
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↑ 世界各国におけるテレビへの信頼度(2010-2014年)(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・全く信頼しない)
今サイトが主に日本在住者に向けて情報発信をしていることもあり、日本の項目を赤で着色した。第一印象として把握できるのは、日本は先進諸国の中ではずば抜けて、そして全体でも相当の上位に位置していること。特に「新聞・雑誌」では「妄信」に近い群を抜いた高値となっている。【「新聞って信頼できるよね」「正確だよね」はそれぞれ6割、ただし若者と高齢者の間には大きなギャップも】【新聞記事や特集7割・テレビ番組8割……シニア層の情報源、テレビや新聞が圧倒的】でも解説している通り、日本国内では特に高齢者において新聞などの従来型紙媒体のメディア、そしてテレビを信頼する傾向が強い。この傾向は世界共通のイメージがあるように思えたが、実のところは日本など少数国の特異的な現象である可能性はある。
例えばアメリカでは(でも)【アメリカ人がいつテレビを見ているのかがひとめで分かる図】の調査結果などのように、高齢者の方がテレビ視聴時間は長い。にもかかわらずテレビへの信頼度が全体として低いままなのは、「テレビは信頼できないもの」と割り切った上で、娯楽として視聴しているからなのだろう。
また、国の名前の並びを良く見ると、全般的にアジア系諸国は「新聞・雑誌」「テレビ」への信頼度が高い。民族性という言葉でくくるのは多分にリスクがあるが、メディアや情報に対する考え方が地域単位で根底部分から異なるのかもしれない。
今件調査結果は2010年から2014年に至るもの。精査の上ではその5年の間の値として扱われている。日本の場合は2010年調査とあり、先の震災による大規模なメディアに対する価値観の変容ぶりは反映されていない。次回調査結果が出る5年後に、いかなる値が呈されることになるのか、気になるところではある。
参考までにデータが確認できる範囲で、日本の時系列的な値の変化を追いかけた結果が次のグラフ。
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↑ 世界各国における新聞・雑誌への信頼度(日本、時系列)(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・全く信頼しない)
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↑ 世界各国におけるテレビへの信頼度(日本、時系列)(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・全く信頼しない)
調査期間が飛んでおり、横軸の時間の流れは均一でないことに注意してほしい。一方、世紀を区切りに大きな価値観の変容が生じ、現在における日本の過度なまでのテレビや新聞などへの信頼は今世紀に入ってから構築されたことがうかがえる。調査様式の変更によるものとの可能性もあるが、他国の同一時系列では似たような変化が無いため、やはり日本の価値観の変化によるものだろう。
この前後に起きた社会的事象といえば、高度経済成長の終えんやバブル崩壊などが挙げられる(インターネットの普及浸透は2005年前後のため、時系列的に合致しない)。今回の調査結果項目だけで判断するのはリスクが高いが、経済成長の終えんなどと共に、日本人の価値観に小さからぬ変化が生じたことは十分考えられよう。
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