「成果を上げるチーム・効果的なチームは、何が決めるのか?」 2012年から、Googleのリサーチチームが「Project Aristotle」の中で明らかにしました。
そこでは「心理的安全性」が最も重要だった、と結論付けられています。
けれど、わかったようでよくわからない「心理的安全性」とは、ほんとうには、いったい何なのでしょうか?
わたしたちは、この知見をどう活かして、自分の職場で生産的で効果的なチーム作りができるのでしょうか。
実は、「心理的安全性」には、およそ50年の研究の歴史があります。
ここでは、その50年の歴史を圧縮して、いまの科学でわかっていること、 わかっていないことをお伝えしていきたいと想います。
中でも、組織論と呼ばれる分野に該当します。
この組織論では、「個人」「チームやグループ」「組織」という3つの規模で、人またはその集団を捉えます。
この「心理的安全性」が存在することは、それらどのレイヤーでも、大事だとされています。
これら3つのレイヤーがありますが、Googleの調査では「チーム」に着目しています。この「チームの心理的安全性」は、実は20年ほど前、1999年に、ハーバード大学のエドモンドソン先生が、この分野の金字塔となるような調査研究をまとめたことで、一躍組織論の中で、注目される概念になりました。
「チームの心理的安全性」が注目されるようになったのは、組織の業績を上げる上で「チームが学習すること」が、組織論の中でも「組織学習論」と呼ばれる分野で、重要視されているからです。
これら、組織学習論でいうと、「U理論」「学習する組織」などの著作のある、MITのピータ・センゲ博士が有名ですね。
「チーム」とか、「学習」という言葉について、今一度、整理しておきましょう。
いまを生きるわたしたちは、ごく自然に「チーム」という言葉を使います。
けれど、Ostermanさんという研究者によると「チームという概念それ自体が、1980年以降、最も広まったイノベーションのひとつ」なのだと言います。
(Osterman, P. (1994). How common is workplace transformation and who adopts it?. ILR Review, 47(2), 173-188.
つまり、職場における「チーム」というコンセプトは、発明され、導入され、広まった、ここ40年くらいの新しい概念だと言うのです。(スポーツにおける「チーム」は、もっとずっと昔からあったことでしょうが。)
「チーム」は名詞ではなく、動詞:チーミングである。
どういうことでしょうか。
例えばあなたが、新入社員で、10月1日、内定式に行ったとしましょう。 友達はおろか、知り合いも一人もいません。
横長のテーブルごとに、3人づつ腰掛けています。 で、言われます「左右の人と3人でチームをつくってください。」
果たしてこれは、チームでしょうか?
チーム、というよりは「個人の集まり」と言ったほうが、正確かもしれません。
チームとは、単に個人の集まりにつけた「名前」ではないはずです。
チームとは、ちょうどこんな風に、メンバーの間であったり、メンバーと、外にあるゴールや問題との間で、何かしらの相互作用や活動が行われているはずです。
このことを、エドモンド先生は次のように言いました。
「チームとは、人々が互いに新しいアイディアを生み出したり、互いに答えを見つけたり、互いに問題を解決したり、するための活動である。」(2012, Edmondson)
これが、チームが「動詞:チーミングだ!」と彼女が主張する、その意味です。
さて、わたしたちの「チーム」は現在、どんな状況に置かれているでしょうか。
過去の成功事例や、偉い人の書いたマニュアル通りにやればオールオッケーなチーム(実行志向のチーム)は減っていて、「不確実性と難度の高い挑戦」が求められるようなチーム(学習志向のチーム)が、増えてきているのではないでしょうか。
不確実性の高い世界では、チームは「学習する」必要があります。
マニュアルを学ぶ、ということではなく、実践や挑戦、失敗から学ぶ必要がある、ということです。
(図左:フォードT型。世界で1000万台売れたとか。図右:テスラ車。)
これら、チームの差異を比べると、次の図のようになります。
そして「チームの心理的安全性」とは、「チームがいま業績を上げる」ために必要なのではなく、未来をつくる、ために「チームが学習する基礎」となるから、重要だ、というのがこの20年の「チームの心理的安全性」研究の結論です。
いくつか、主要な研究をレビューしてみましょう。
まずは、本稿で登場3回め。1999年の、エドモンドソン先生の研究です。 ちなみに、6,000回以上引用されている、化物論文です。
続いて、2011年のリーダーシップと心理的安全性に対する研究です。
上記のように心理的安全性に関する研究は、特に米国を中心に盛んに行われており、
- チームの学習を推進し、中長期で業績や、質の高い意思決定に繋がる
- 上質な人間関係と、リーダーシップ、特にサーヴァント・リーダーシップによって育まれる
あるチームの方が、ないチームよりも、衝突/問題が報告される可能性が高い(揉み消されない・起きた問題が隠蔽されず報告される)
それがあると、起きた衝突/問題は、人間関係の拗れにはならず、問題を吸い上げ、解決策を幅広く検討するために活用される。
とされています。
さて、改めて「チームの心理的安全性」とは、 いったいぜんたい、何のことでしょうか?
エドモンドソン先生のもともとの定義では、次のように書かれています。
もう少し、噛み砕いてみましょう。
チームが心理的安全、とは、つまりこういうことです。
もっと、噛み砕いて言うと。
「このチームだったら、大丈夫」と思えること。
それが、心理的安全性です。
さて、ではどうしたらいいのか? みらいをつくるチームにとって重要な「心理的安全性=大丈夫」をどうやって作ればいいのか。という疑問が残ります。
研究では、
など、いろいろなことが言われていますが、ふたつ問題があります。
ひとつは、上記のような「大事なこと」を聴いても、具体的に何をどうしたらよいか、わからない、という問題。
もうひとつは、アメリカの研究がほとんどであるため、日本の企業風土で活かして役に立つのかわからない、
という、ふたつの「わからない」問題です。
というわけで、実践する上でのヒントがわからない時は、実践して成果を出してきた、実務家に聴いてみるのが一番でしょう。
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