【3分で復習】過激左派「アンティファ」ってどんな組織? | 大統領にテロ組織に指定すると名指しされ… | クーリエ・ジャポン

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☆☆☆:議論用ではない
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Jun 6, 2020 01:47 PM
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デモに参加するアンティファ。2018年、バージニア州シャーロッツビルにて Photo: Win McNamee / Getty Images
黒人男性のジョージ・フロイドが、白人のデレク・ショーヴァンをはじめとする警察官たちに押さえつけられて亡くなり、10日経つ。
アメリカではいまも大規模なデモが続いているが、多くの参加者が平和的な手段を選んでいるようだ。人々の主張に理解を示し、黒人たちと手を取り合う警察の姿も報じられている。しかし一方で、デモの参加者に暴力をくわえる警察もニュースで大きく取り上げられている。
なかでも世界の注目を集めたのは、デモをするなかで建物を破壊し火を点けたり、略奪行為に走ったりする者の姿だろう。こうした暴力的な抗議活動をするデモ参加者に関して、ウィリアム・バー米司法長官は次のように批判している。
「残念ながら、多くの都市で暴動が起きており、平和的な抗議活動が暴力的な過激派にハイジャックされています」
「多くの場所で暴力行為が組織的に計画され、極左の過激派グループやアナキストの団体に先導されているようです」
そんなななか、一部が「暴徒化」したことを受け、ドナルド・トランプ米大統領がツイッターでこう明言し物議を醸した。
「アメリカ合衆国はANTIFA(アンティファ)をテロ組織に指定する」
「フォーブス」いわく「アメリカではアンティファの存在感が増している」という。反資本主義かつ無政府主義者の集まりであり、反ファシズムを掲げる過激左派団体である彼らは、一体何者なのか。そしてどのような活動をしているのか?
その歴史や目的を米「ニューヨーク・タイムズ」から抜粋してお伝えしたい。
誰が、なぜ所属しているの?
具体的なメンバーの数は不明だ。アンティファにはリーダーが存在せず、賛同者たちはゆるやかに繋がっている程度なため、そもそも組織の体をなしていないのだ。
メンバーたちは、権威主義的な考え方をする者や、同性愛嫌悪、人種差別、外国人嫌悪とみなされるような行為に反対するべく活動している。
活動の目的は何?
ファシストや人種差別主義者、極右組織などを「意見を主張する場」から追い出すことが主な目的だ。カウンターデモを行うことも多い。
彼らはなぜそのようなことをするのか?
それは「人種的マイノリティや女性、LGBTQの人々などに対する差別的な思想を公にすることを許せば、いずれ当事者への暴力につながるから」というのが彼らの言い分だ。
どうして名前が知られるようになったの?
アンティファの抗議活動は暴力的なことが多い。たとえば、以下のような事件に関わっている。
■極右運動「オルタナ右翼」の指導者であるリチャード・スペンサーが、テレビのインタビューを路上で受けている最中、反トランプデモに参加していたアンティファのメンバーに不意打ちで殴打された。
■カリフォルニア大学バークレー校で、トランプ大統領を支持するコメンテーター、ミロ・イアノポウロスの講演会が開催される予定だった。しかし、アンティファが会場に花火を投げつけたり、窓ガラスを割ったりしたことで講演は中止となった。
■ヴァージニア州シャーロッツビルで、極右集会「ユナイト・ザ・ライト・ラリー」が開催された。その際に、白人至上主義者やネオナチのデモ隊と、アンティファなどの反対派が衝突し乱闘に発展。死傷者が出る事態となった。
こうした事件を経て、アンティファの知名度が高まっている。
なぜ暴力的な行為をするの?
アンティファのなかには平和的に抗議運動をしているメンバーもいるが、「自己防衛としての暴力」を正当化している者が多い。
というのも、アンティファと反対の立場をとる人種差別主義者やファシストにも、自由に組織化する権利がある。そんな組織が台頭すれば「差別の対象となっているコミュニティへの暴力は必然的に起きてしまう」とアンティファは考えているのだ。
「前もってファシストから自己防衛する」──そのためなら暴力もやむなし、ということなのだ。
いつから活動しているの?
「ウェブスター辞典」によると、「アンティファ」という言葉が最初に使われたのは1946年のこと。ナチズムに反対していることを示すドイツ語にルーツがある。
実際に活動が本格化したのは、2016年の大統領選でドナルド・トランプが当選してからだ。オルタナ右翼がもたらすかもしれない「危険な時代」に対抗するべく、大勢がこの運動に参加し始めたという。
アメリカではじめてこの用語をグループ名に使った組織のひとつが「ローズ・シティ・アンティファ」だ。2007年にオレゴン州ポートランドで結成されたと言われている。
このグループはSNSで大勢に支持されており、アカウントではニュース記事を共有したり、時には右派の人物の身元や個人情報を調べて「晒す」こともあるようだ。
他のグループとは何が違うの?
実のところ、アンティファはアナキスト団体に近い。
資本主義を批判し、警察を含む「権威の構造」を解体しようとするなど、両者のイデオロギーはかなり似通っている。抗議活動の際には黒一色の服をまとうところも同じだ。
政治家の反応は?
アンティファの活動に対して、右派も左派も批判的だ。
暴力を伴う抗議行動を受け、ナンシー・ペロシ下院議長は「アンティファと名乗る人々の暴力的な行動」を非難し、逮捕されるべきだと語った。
また、保守的な政治家やメディアは「保守派が平和的に意見を述べる場まで奪おうとしている」とアンティファを非難している。

アンティファを「テロ組織」に指定することはなぜ危険か

トランプ大統領はアンティファをテロ組織に指定すると発言したが、そもそも、アメリカの大統領には国内の団体をテロ組織に指定する権限がない。指定対象は「外国のテロ組織」のみだ。
とはいえ、この状況を「楽観視すべきではないだろう」と米「ロサンゼルス・タイムズ」に語るのはジョナサン・ターリーだ。彼は「CBS」や「BBC」の法律アナリストを務めている。
ターリーいわく、「アンティファは国内の組織だからテロリストに指定される可能性が低い」とする声が多いが、政府が「理由をこじつける」ことだってあり得るという。たとえば「アンティファには他国の支持者がいる」と主張することも可能だろう、というのが彼の意見だ。
そして、もし本当にアンティファが「テロ組織」に指定されてしまった場合、アメリカにどのような弊害があるのか?
「まず、アンティファは特定の指導者や拠点を持たない。彼らは過激派で、無政府主義を主張する個人、あるいは小さなグループで成り立つゆるい集合体だ」
「こうした曖昧に定義づけられた団体を一度『テロ組織』に指定してしまえば、政府は曖昧な立場にいるさまざまな政治活動家に対して、刑事捜査権や訴追権を発動できるようになってしまう」
また、アンティファの人々はたしかに暴力的な抗議活動をしている。
しかし「『クー・クラックス・クラン』から『グリーンピース』まで、さまざまな組織のメンバーが犯罪行為によって調査され、起訴されてきた。しかし、そのために特定の組織がテロリストに指定されたことはない」とターリーは主張する。
「政府が一部のメンバーの行動によってテロ組織を指定できるなら、政治的発言を無制限に犯罪化できてしまう可能性があるのだ」