水中ロボットで海の底からきれいに。欧州の海洋プラ収集プロジェクト「Sea Clear」 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

★★★:バランスよく議論できる
★★☆:意見を吟味する
★☆☆:客観的情報
☆☆☆:議論用ではない
☆☆☆:議論用ではない
ある特定のオピニオンが述べられる
ある特定のオピニオンが述べられる
いつ登録したか
Sep 27, 2020 12:19 AM
オピニオンが含まれない
オピニオンが含まれない
カテゴリー
両論が併記される
両論が併記される
事実ベース
事実ベース
立体的(多角的)
立体的(多角的)
考察的・思想的
考察的・思想的
複数のオピニオンが含まれる
複数のオピニオンが含まれる
調査、データ、観察的
調査、データ、観察的
毎年世界では800万トンにのぼるプラスチックが海に流されている(※1)。しかし、海洋プラスチックのうち、海面に漂っているものはわずかで、全体の約90%が海底に沈むプラスチックである。環境を汚染するプラスチックは除去されるべきだが、海面に浮かび目に見えるものならまだしも、海中のプラスチックごみを取り除くのは至難の業だ。
そんな中、海底に沈んだプラスチックをドローンとロボットを使ってマッピングして収集するというプロジェクト、「SeaClear」が発表された。ドイツに本拠を置くフラウンホーファー研究機構によるものだ。
notion imagenotion image
(c)TUM
当プロジェクトは、ドローン(UAV)と2台の遠隔操作水中ロボット(ROV)、自律または遠隔制御の母船(無人水上機)を使って行われる。1台の水中ロボットとドローンで海面と水中のごみをマッピングし、もう一台の水中ロボットがマッピングされた海底ごみを収集して、箱に捨てるという仕組み。ロボットとドローンは、微妙な色や成分の違いを捉えられるマルチスペクトルカメラや音響センサーなどを組み合わせて廃棄物を検出する。その際、深層学習アルゴリズムを使用して海洋生物と区別している。
現在、研究チームは深さ20〜30メートルの2カ所で技術試験を行っている。ドイツ最大の港であるハンブルグ港と、「アドリア海の真珠」 とうたわれるほどの美しい旧市街をもつクロアチアの観光地、ドゥブロヴニクの沿岸である。一回目の試験は両方の地域ですでに実施済みで、ドゥブロヴニクでは再度試験が行われる予定だ。
notion imagenotion image
ハンブルグ港 (c)HPA
この2つの試験箇所では課題が異なるため、それぞれに適した対策が施されている。例えば、水が濁っており視界が限られるために分析が非常に困難なハンブルグ港は、港湾地域の水中廃棄物の種類と量に関する明確な統計がない。そのため、音響センサーなど、さまざまなセンサーからのデータを融合して海洋ごみをマッピングし、海底ごみの種類を評価している。
一方で、観光地であるドゥブロヴニクは、人のアクセスを制限できないという問題を抱える。そこで、母艦のセンサーをもとに飛行ドローンに追加の安全装置を設置し、安全性を保証している。主な目的は、観光ホットスポットの水をきれいにし、システム全体を完全なものにすることだ。
ハンブルグ、ドゥブロヴニクともにサンゴ礁は存在しないが、最終的なSeaClearシステム配備の際には、サンゴ礁を区別する光学センサーとAIを使用して、ごみだけを収集することを計画している。
notion imagenotion image
ドゥブロヴニク (c)DUNEA
SeaClearは、フラウンホーファー研究機構がテクニカルコーディネーターとしてシステム全体を統合している。フラウンホーファー研究機構は、収集した廃棄物を保管する水中バスケットの開発設計や、ロボットにコマンドを送信してデータ配信する仮想監視センターの開発も行っている。当プロジェクトでは、ウェブインターフェースを介して顧客にSeaClearサービスを提供するための通信ネットワークとサーバーインフラストラクチャのセットアップも行う。
類似のプロジェクトとして、2020年7月末、日本でもドローンとAIを使用した海の清掃実験が行われた。産学連携海ごみ削減プロジェクト「Debris Watchers」のチームが長崎県対馬市で実施したドローンとAIを活用した実証実験である。
海をきれいにするために、多くの国や地域で行われているさまざまなプロジェクト。海洋プラスチックをドローンやロボットやAIという最新技術を使って回収する技術は、今後ますます研究が進められていくだろう。そして、2020年9月19日(土) は「World Cleanup Day 2020」で、世界中で一斉に地球を綺麗にする日だ。あなたも、私たちの大切な海と地球に思いをはせながら、各地で行われるアクションに参加してみてはいかがだろうか。
(※画像:フラウンホーファー研究機構より引用)
Edited by Tomoko Ito