【徹底分析】「ハマス」がイスラエルにロケット弾を撃ち込むのは誰のためか? | クーリエ・ジャポン

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☆☆☆:議論用ではない
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May 22, 2021 10:22 PM
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ハマスやほかのパレスチナ武装組織によるガザ地区での軍事演習の様子(2020年12月29日) Photo: Momen Faiz/NurPhoto via Getty Images
激化するガザ地区の「ハマス」とイスラエルとの軍事衝突。だが、そもそもハマスはなぜ今回、イスラエルを攻撃しはじめたのか? 『パレスチナの脱植民地化─アンチコロニアルとポストコロニアルのあいだのハマス』(未邦訳)という本を出版したばかりのハマス研究者が読み解く真相とは──。
パレスチナ人家族が東エルサレムで強制追放されたことに対する抗議運動が起こると、イスラエルは、パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」が抗議を「激化」させたと非難した。
だがじつのところ、ハマスは抗議運動と何の関係もなかった。若きパレスチナ人たちが抗議していたのは、土地所有をめぐる法と裁判所を使ってパレスチナ人を追い出し、エルサレムをユダヤ人の首都に(再び)作り変えようとするイスラエルの組織立った目論見に対してだった。
5月10日、ハマスはイスラエルに向けてロケット弾を発射しはじめた。表向きは、エルサレムのアルアクサ・モスクにいたパレスチナ人礼拝者たちをイスラエル警察が攻撃したことに対する報復としてだ。
イスラエルはこれに対し、ガザ地区への大規模な空爆で応じ、その週の終わりには地上砲撃も開始した。
状況は日増しに悪化し、5月17日夜までに死者数は212人と急増、そのうちの61人は子供だ。
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ガザ地区でイスラエルの空爆によって破壊された建物の瓦礫の中からぬいぐるみやおもちゃを集める少女(2021年5月19日) Photo: Ahmed Zakot/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
だが、エルサレムやイスラエル中、およびイスラエルが占領するヨルダン川西岸で起こった抗議からガザをめぐる今回の紛争へという流れのなかで、「過激派分子」や「テロリスト組織」がこうした抗議を駆り立てているとのイスラエルの主張を裏づけるものはない。
さらに言えば、パレスチナ人の抗議者たちは、ハマスの参戦を一様に歓迎しているわけでもない。
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イスラエルのハイファでデモに参加するパレスチナ系の市民たち(2021年5月18日) Photo: Mati Milstein/NurPhoto via Getty Images
ではなぜ、ハマスはロケット弾を連射しはじめたのか? 答えは、ハマスの抵抗組織としての長い歴史と、支配者としての役割が政治的脅威に直面しているという認識にある。

ハマスの野望

1987年に、ハマスが「ムスリム同胞団」パレスチナ支部を母体に創設されて以降、アナリストやメディア報道はおもに、ハマスの軍事部門に注目してきた。
ハマスにとっては社会奉仕や慈善事業も極めて重要な焦点だった。一方で、ハマスにはイスラエルに軍事的に対峙する能力も意欲もあり、それによって世俗的なライバル「ファタハ」と一線を画していた。
だがハマスの切なる願いは、パレスチナの抵抗運動を主導することだ。