『ゼロ・トゥ・ワン』対談 賛成する人がいない、大切な真実とはなにか。 ピーター・ティール Peter Thiel × 糸井重里 Shigesato Itoi - ほぼ日刊イトイ新聞

★★★:バランスよく議論できる
★★☆:意見を吟味する
★☆☆:客観的情報
☆☆☆:議論用ではない
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ある特定のオピニオンが述べられる
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Jan 25, 2020 01:01 PM
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両論が併記される
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事実ベース
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立体的(多角的)
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考察的・思想的
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複数のオピニオンが含まれる
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調査、データ、観察的
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去年、糸井重里が たいへんおもしろがった本のひとつが ピーター・ティールさんが書いた 『ゼロ・トゥ・ワン』でした。 なにしろ、糸井重里は、 この本をまるまる2回、読みました。 それは、けっこう、めずらしいことです。
本の著者であるピーター・ティールさんは、 「いまシリコンバレーでもっとも注目される投資家」 とメディアにしばしば紹介されます。
1998年にPayPal(ペイパル)という インターネット上で決済するサービスを共同創業し、 その後、ベンチャーに投資する会社を設立。 Facebook初の外部投資家となったほか、 航空宇宙、人工知能、エネルギーといった さまざまな分野に革新的な提案をする 新しい企業に投資を続けています。
ちなみに、ピーターさんをはじめとする PayPal(ペイパル)の創業メンバーは、 現在も個々に投資家として活躍し、 YouTube、テスラモーターズ、 LinkedIn、スペースXといった アメリカの価値あるベンチャー企業を いくつも起ち上げています。 IT業界に大きな影響力を持つ彼らは 「PayPalマフィア」の異名をとるようになりました。 ピーター・ティールさんは、 その「PayPalマフィア」の中心的な存在です。
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ピーター・ティールさんが書いた 『ゼロ・トゥ・ワン』という本は、 スタンフォード大学の学生に向けて彼が行った 「起業についての講義」の議事録がもとになっています。 つまり、いまから起業する可能性を持つ若い人たちに、 「PayPalマフィア」のリーダー、 ピーター・ティールさんが、 投資と起業についての根本的な考えを 基礎から語るという体裁をとっています。 ですから、投資や企業に知識がなくても理解しやすく、 データやノウハウではなく、 人と会社についての、 根源的なことについて述べられています。
糸井重里は、『ゼロ・トゥ・ワン』について 原稿にこんなふうに書きました。
『ゼロ・トゥ・ワン』は、 ひさびさに興奮させてくれる本だった。 自信たっぷりな断定に満ちた語り口なのだが、 強気な調子とは裏腹に、言っていることは、 ぼくにはしごく真っ直ぐなことに思える。
著者は採用面接で必ず訊く質問があるという。 「賛成する人がほとんどいない、 大切な真実はなんだろう?」 そんな問いかけに対して、 「わたし」はなにを答えられるというのだろうか。
利口そうな「正解」を知っているかどうかなんて、 ここでは、なんにも役に立たないのだ。 そうして、著者自身がよく知っている 90年代のネットバブルの狂騒と数々の失敗について、 また、そこから得られたはずの「教訓」が語られる。 読者であるぼくらは、それを「なるほど」と思いかける。 すると、すかさず、もう一度ひっくり返される。 見透かされたように、揺さぶられるのだ。 そして章は「何よりの逆張りは、 大衆の意見に反対することではなく、 自分の頭で考えることだ。」と結ばれるのだ。
この本を学ぼう(まねぼう)などとする態度は、 ことごとくかく乱されひっくり返されていく。 読み進めて行くと「競争というイデオロギー」について、 かなり詳しく説明がはじまる。 「競争」なんかが進化をつくるんじゃなく、 重要なのは「独占」だというような考えが披露される。 ここらへんから、ぼくはもう、この本を読んでいる間、 じっくりと著者と遊びまくろうと覚悟を決めたのだった。 この著者は、読者と同じ高さの場所に立って、 自身を奮い立たせ、読者を挑発してくる。 頭と心に汗をかいたぼくは、少し勇気を大きくした。
(2014年10月17日 糸井重里「今日のダーリン」より)
そのピーター・ティールさんが、 今年の2月に来日し、 日本の読者のために講演を行いました。 そして講演後の第二部として、 糸井重里とトークイベントを行いました。
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次回から、まずはピーター・ティールさんの講演を、 そして、その後、糸井重里との対談を掲載します。
どうぞおたのしみに。
(つづきます)
出版社:NHK出版 定価:1600円+税 ISBN-10: 4140816589 ISBN-13: 978-4140816585