米議会襲撃 65日間の危険信号 - BBCニュース

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Jan 14, 2021 11:39 PM
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シャヤン・サルダリザデ、ジェシカ・ルッセンホップ BBCモニタリング、BBCニュース(ワシントン)
1月6日の米議会襲撃には、世界各地で大勢が仰天した。しかし実際には、陰謀論や極右勢力の動きをオンラインでウオッチする人たちの前では、危険信号がずっと点滅し続けていた。
米大統領選は昨年11月3日だった。日付が変わった米東部時間午前2時21分、ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスのイースト・ルームに設けられた壇上に上がり、勝利を宣言した。
「この選挙に勝つ準備をしていた。正直言って、我々はこの選挙に勝ったんだ」
この演説は、「連中は選挙を盗もうとしている」とツイートしてから1時間後のことだった。
トランプ氏は選挙に勝ってなどいなかった。盗まれるような勝利も手にしていなかった。しかし、こうした事実は、熱烈な支持者にとってはどうでもよいことだったし、今でもそれは変わらない。
トランプ氏は大統領選の夜、「我々が大きくリードしているが、連中は選挙を盗もうとしている」と裏づけなくツイートした(ツイッター社が「このツイートの内容には異論があります」と警告をつけている)
それから65日後、米議会の議事堂に暴徒が押し寄せ、襲撃した。暴徒の顔ぶれは一様ではなく、トランプ氏を崇める陰謀論Qアノンの信奉者のほか、「選挙を盗ませるな」運動の支持者、極右活動家、オンライン・トロール(嫌がらせ書き込みをする人たち)などが含まれていた。
ワシントン騒乱から約48時間たった1月8日になると米ツイッターは、陰謀論を拡散し、選挙結果を覆すための直接行動を呼びかけるなどしていた、特に影響力の強いトランプ支持者のアカウントを次々と凍結し始めた。
トランプ氏はもはや、8800万人のフォロワーに向かってツイートできなくなった。「暴力をさらに扇動するリスク」が理由だと、ツイッターは説明した。
米首都ワシントンでの暴力は世界に衝撃を与えた。警備当局は、不意を突かれたかのように見えた。
しかし、オンラインやアメリカ各地で繰り広げられる動きを注意深く観察していた人は、誰も驚かなかった。
選挙当日になると、投票が始まるや否や「不正」のうわさが広まり始めた。
与党・共和党の選挙立会人がフィラデルフィアの投票所で入場を断られている様子のビデオが、オンラインで拡散した。「#StopTheSteal(選挙を盗ませるな)」というハッシュタグと共に、「フィラデルフィアの立会人が投票所に入れてもらえなかった。これは不当だ」とツイートした人もいた。
しかし、この動画がきっかけに、その後たくさんの動画や写真や画像や主張が拡散され、「#StopTheSteal」というハッシュタグが定着した。
主張の内容は明らかだった。つまり、「トランプ氏は圧勝したのに、『ディープステイト』と呼ばれる体制派の暗黒勢力が、勝利を盗み取った」という主張だ。
投票日から日付が変わった11月4日の未明、まだ大量の票が未開票で、米主要メディアが野党・民主党のジョー・バイデン候補の勝利確実を伝える3日も前に、トランプ氏は自分の勝利を宣言した。そして、「アメリカ国民に対する詐欺」が行われたと主張した。
トランプ氏はこの主張の根拠を示さなかった。過去の米大統領選を調べた複数の研究はすでに、不正投票はきわめて珍しいことだと証明していた。
11月4日午前2時過ぎに、早々に勝利を宣言したトランプ氏
その日の午後にはフェイスブックですでに「Stop the Steal」グループが作られ、異例のペースで急成長した。11月5日までに一気に30万人が参加していた。
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しかしそれに加えて、「内戦」や「革命」が必要だと主張する、もっと気がかりな投稿もたくさんあった。
フェイスブックは11月5日の午後にはこのグループを削除したが、それまでにすでに50万件近い投稿や共有、「いいね」や返答の書き込みがあった。
そして、数十の類似グループがたちまち立ち上がった。
トランプ氏の勝利を主張する有権者たち(11月5日、アリゾナ州)
「トランプ氏の勝利が盗まれた」という発想はオンラインで広がり続け、定着した。やがて、「Stop the Steal」サイトが作られ、「正しく公平な投票結果を守るため、現場」で活動する協力者の登録を募った。
11月7日になると、主要メディア各社がバイデン氏の勝利が確実になったと伝えた。民主党の支持者が多い地域では、大勢が往来に出て祝い、喜びを分かち合った。しかし、トランプ氏の熱烈な支持者たちは、激しく怒り、反発した。
【米大統領選2020】 バイデン氏が当選確実、BBCが伝えた瞬間
トランプ氏の支持者たちは11月14日にワシントンで、「100万人のMAGA(アメリカをまた偉大にしよう)行進」を行うと発表。トランプ氏は、自分も立ち寄って、できれば「あいさつ」したいとツイートした。
ワシントンでのトランプ派集会はそれまで、あまり人の集まりがよくなかった。しかしあの11月の快晴の朝、ホワイトハウスに近いフリーダム広場には、数千人が集まった。
トランプ氏を乗せた車列がこの集会の近くを通ると、支持者たちは大喜びで、大統領を一目見ようと湧きたった。赤い「MAGA」帽子をかぶったトランプ氏は、車内から嬉しそうに群衆に手を振った。
主要な保守派著名人も参加していたが、この集会の中心的存在はあくまでも数々の極右団体だった。
行進には、移民排斥主義の極右団体「プラウド・ボーイズ」も参加していた。これまでも数々のデモや行進で暴力沙汰を繰り返していたこの団体は、後に議会襲撃にも参加する。ほかの私兵組織や極右関係者、陰謀論を推進する右派なども大勢、この集会に参加した。
夜になると、トランプ氏の支持者たちと、この集会に反対する対抗勢力とが衝突した。ホワイトハウスから遠くない場所での乱闘もあった。
この時は警察が暴力沙汰をあらかた押さえ込んだ。しかし、この時の衝突や乱闘は明らかに、その後の展開の予兆だった。
11月も半ばになると、トランプ氏と弁護団は、各地で開始した法廷闘争に望みをかけていた。
ジョージア州での再開票を「詐欺」だと非難し、訴訟を応援するトランプ氏のツイート(ツイッター社が「不正選挙についてのこの主張には異論があります」と警告をつけている)
すでに複数の裁判所がトランプ陣営や支持者による不正選挙の訴えを退けていたが、トランプ派ネット利用者の間では、大統領と親しい弁護士2人に注目が集まりつつあった。シドニー・パウエル氏とリン・ウッド氏だ。
パウエル弁護士とウッド弁護士は、大掛かりな不正選挙の証拠を徹底的に揃えて公判に臨むとたびたび主張した。自分たちの集めた証拠が表ざたになれば、バイデン氏の当選などあとかたもなくなるとした。
保守派の活動家で元連邦検事のパウエル氏は保守派FOXニュースで、自分が不正の証拠を提示するのは「クラーケンを放つ(release the Kraken)」のに等しいと述べた。「クラーケン」とは深海から突如浮上して敵を飲み込む、北欧神話に出てくる巨大な海の怪物だ。
「クラーケン」はただちにインターネットのミーム(拡散される画像・動画)になり、大掛かりな不正選挙があったと根拠を示さず主張する大勢が使うようになった。
パウエル弁護士とウッド弁護士は、陰謀論Qアノンを信じる人たちの間で、英雄扱いされるようになった。Qアノンとはトランプ氏を支持する根拠のない陰謀論で、「世界の政財界やマスコミ、ハリウッド、民主党にはびこる悪魔崇拝の小児性加害者が作り上げた『ディープステート』に対して、トランプ大統領と極秘の軍情報部が秘密の戦争を繰り広げている」というのが主な内容。
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両弁護士は、トランプ大統領と、その支持者の中でも特に陰謀論に凝り固まった人たちを結びつける存在となった。陰謀論を信じる支持者の多くは、1月6日の議会襲撃で議事堂内部に侵入した。
パウエル氏とウッド氏は、オンラインでしきりに騒ぎを巻き起こしたが、実際の訴訟は拍子抜けに終わった。
11月末に約200ページもの文書を公表したものの、その訴訟とはたくさんの陰謀論や、すでに反証されて数十の裁判所に退けられた根拠のない主張をかきあつめたものに過ぎないことが明らかになった。
加えて両弁護士による訴状には、法律上の初歩的な間違いや、単純なつづりミス、誤字脱字なども多数あった。
それでも、「ミーム」は広がり続けた。「クラーケン」や「クラーケンを放て」といった表現は、議会襲撃の前にツイッター上で100万回以上、繰り返し使われた。
各地の裁判所が次々とトランプ陣営や支持者の訴えを退けていく間、極右活動家たちは激戦州の選挙管理委員会を標的に、選管幹部やスタッフを攻撃した。
バイデン氏が勝った激戦州ジョージア州では、州の選管スタッフが殺害予告を受けて脅された。同州のブライアン・ケンプ州知事やブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官、そして同州の投票システムの責任者、ゲイブリエル・スターリング氏(同)はいずれも共和党員だが、それでもオンラインで「裏切り者」などと攻撃された。
12月1日になるとスターリング氏は報道陣を前に、「何もかもやりすぎだ! 何もかも!」、「もうこれっきりにしなくてはならない」と語気を強めた。また、「誰かがけがをする、誰かが撃たれる、このままでは人が死ぬ」と声を震わせながら訴え、支持者による脅しや威圧をやめさせるようトランプ氏に呼びかけた。スターリング氏のこの警告は、先見の明あるものになってしまった。
【米大統領選2020】 「このままでは人が死ぬ」 ジョージア州選管幹部が警告
同様にバイデン氏が勝った激戦州ミシガンでは12月初め、ジョスリン・ベンソン州務長官(民主党)の自宅に、約30人のトランプ派が押し寄せた。
デトロイトに住むベンソン氏は4歳の息子と一緒に、クリスマス・ツリーの飾り付けを終えたところだった。
自宅の外には横断幕を手にしたトランプ氏の支持者たちが、メガホンを通じて「Stop the steal!」と叫び始めた。「ベンソン、お前は悪党だ」と叫んだ人もいた。
「お前は民主主義の脅威だ」と怒鳴るトランプ派もいた。
抗議に参加した1人はフェイスブックで一部始終を生中継し、自分たちは「どこにもいかない」と主張した。
選挙の実施に関わった州当局者を標的に、こうした抗議は各地で相次いだ。
ジョージア州ではラッフェンスパーガー州務長官の自宅前を、トランプ派の車列がクラクションを鳴らしながらひっきりなしに行きかった。長官夫人は性的暴力の脅しを受けた。
アリゾナ州ではケイティー・ホッブス州務長官(民主党)の自宅前にトランプ派が集まり、「お前を監視してるからな」などと脅した。
トランプ大統領に残された法的・政治的な選択肢が次々と消えていくにつれ、ネット上ではトランプ派の主張が急激に激化し、暴力的になっていった。
12月12日には、ワシントンで2度目の「Stop the Steal」集会が開かれた。またしても数千人が集まり、またしても著名な極右活動家やQアノン支持者、過激なMAGA団体や私兵集団が参加した。
12月12日には、ワシントンで2度目の「Stop the Steal」集会が開かれた
偽証罪などで有罪になった後、トランプ氏に恩赦されたマイケル・フリン元大統領補佐官は、集会の参加者たちを聖書の兵士や、旧約聖書で描かれるジェリコ(エリコ)の壁を突破した祭司になぞらえて鼓舞した。集会主催者たちが、選挙結果を覆すために「ジェリコの行進」をしようと呼びかけていたからだ。
極右団体グロイパースの指導者ニック・フエンテス氏は、「我々はGOP(共和党)をぶち壊す!」と群衆を駆り立てた。フエンテス氏らは以前から、自分たちが「穏健すぎる」とみなす共和党の政治家や関係者を標的にしてきた集団。
この2日後の12月14日には、各州に割り当てられた選挙人たちの投票で、バイデン氏の勝利が確定した。選挙人団の投票は、一般有権者が投票する大統領選で勝った候補が、正式に就任するための手続き。
オンラインの各種プラットフォームでは、法的手段はすべて行き止まりで、トランプ大統領の再選を救うには直接行動しかないという認識が、広がりつつあった。
選挙当日以降、フリン氏やパウエル弁護士、ウッド弁護士のほか、オンラインのトランプ派の間で急速に注目されるようになったのが、ロン・ワトキンス氏だった。
暴力的で性的な過激表現が大量に書き込まれるオンライン掲示板「8chan」や「8kun」を立ち上げたのが、ジム・ワトキンス氏。ロン氏はその息子だ。「8chan」や「8kun」は、Qアノン運動が台頭した場でもある。
ロン・ワトキンス氏は12月17日にツイートを連投し、トランプ大統領が古代ローマのユリウス・カエサルを手本にすべきだと主張。「軍の強烈な忠誠」を利用して、「共和国を復活」させるべきだと力説した。
50万人以上のフォロワーに向かってロン・ワトキンス氏は、「#CrossTheRubicon(ルビコンを渡れ)」をトレンド入りさせるよう呼びかけた。これは紀元前49年にユリウス・カエサルが兵を引いてルビコン川を渡り、共和政ローマに対する内戦を引き起こしたことを念頭にしたもの。このハッシュタグは保守主流派にも広まり、アリゾナ州共和党のケリ・ワード委員長も使用した。
ロン・ワトキンス氏はさらに別のツイートで、トランプ氏は「Insurrection Act(反乱法)」を発動しなくてはならないと主張した。1807年制定のこの法律は、内乱鎮圧などのため国内で米軍などを出動させる権限を大統領に与えている。
ワトキンス氏のツイート連投の翌日、18日にトランプ大統領はホワイトハウスで、パウエル弁護士やフリン氏などを集めて、作戦会議を開いた。
極右勢力の間では、ホワイトハウスでのこの協議を燃料に、さらに「戦争」や「革命」についての書き込みが相次いだ。大統領選の後の1月6日に開かれることが憲法で決まっている連邦議会の上下両院合同会議は、通常は大統領の当選を認定する儀礼的な手続きに過ぎない。しかし、トランプ派の間ではこれこそが最後のチャンスだという見方が広まった。
Qアノン信奉者や一部のMAGA支持者の間では、希望的観測にもとづく物語が徐々に出来上がっていった。1月6日の投票認定手続きを進行するのは上院議長でもある副大統領の役目なので、マイク・ペンス副大統領が選挙人団の投票を拒否して、トランプ氏の当選を認定するものという期待が、高まっていったのだ。
その後にもし国内に混乱が起きれば大統領が軍を出動させて鎮圧するし、大掛かりな不正選挙を仕組んだ「ディープステイト・カバル」(カバルは「一派」などの意味)の一斉逮捕を命じ、一網打尽してグアンタナモ軍刑務所にごっそり送り込む――というのが、トランプ派が思い描いた展開だった。
しかし、現実世界に戻れば、このようなことがあり得るはずはまったくなかった。それでも、支持者たちは自動車を乗り合う「愛国者キャラバン」を全国的に結成して、大挙してワシントンへ向かう計画を立てた。
トランプ氏を支持する旗を立てた車や、時には派手に飾り立てたトレーラーが車列を作り、ケンタッキー州ルイヴィルやジョージア州アトランタ、ペンシルヴェニア州スクラントンなどの巨大駐車場に集まった。
約20人の仲間と共に写真に収まり、「みんなでこれから向かうよ」とツイートした参加者もいた。
ノースカロライナ州にあるイケアの駐車場では、別の男性が自分のトラックを自慢していた。「旗は少しくたびれているが、今では戦闘の旗と呼んでいるんだ」と、この男性は話した。
しかし、ペンス氏を初めとする共和党幹部は、憲法に従い、議会としてバイデン氏の勝利を認定するようだと、次第に明らかになる。すると、トランプ派がペンス氏たちに浴びせる罵詈雑言は残酷なものになり、激化した。
「ペンスは刑務所に入り、反逆罪の裁判を待つことになる」と、ウッド弁護士はツイートした。「銃殺刑に処せられる」とも書いた。
オンライン投稿は沸点に達した。「表現の自由」の場を自認し、トランプ派に人気の「パーラー」や「Gab」などのソーシャルメディアでは、武器や戦争や暴力に関する書き込みが大量に続いた。
「プラウド・ボーイズ」たちのグループは、かつては警察を支持していたが、もはや警察は自分たちの敵だと認定して対立を呼びかける投稿もあった。
トランプ派に人気のサイト「ザ・ドナルド」では何百もの投稿が、どうやって警察の制止線を越えるか、銃規制の厳しいワシントンでどうやって銃など武器を携えて行進するか、大勢が公然と話し合っていた。
連邦議会の議事堂を襲撃して、「反逆的」な連邦議員たちを逮捕する方法についての相談も、しきりに行われていた。
1月6日の水曜日、トランプ氏はホワイトハウスのすぐ南にあるエリプス公園で、数千人を前に1時間以上演説した。
最初のうちは支持者たちに「平和的に、そして愛国的に、主張するように」と呼びかけていた。しかしトランプ氏は演説をこう締めくくった。「必死になってとことん戦うぞ。必死になって戦わなければ、みんなの国はもうなくなってしまう」。
「だからみんなして、みんなでペンシルヴェニア通りを歩いて(略)連邦議会に向かうぞ」
トランプ氏支持者たちが米議事堂に侵入する瞬間
1月6日が暴力の日になるのは最初から明らかだったと、そういう人もいる。
ジョージ・W・ブッシュ元大統領の下で国土安全保障長官だったマイケル・チャートフ氏は、議会警察を批判する。州兵を大勢配備してはどうかという事前の呼びかけを、議会警察は断っていたと報道されている。
「警察組織によるあれほどの失態は見たことがない」と、チャートフ氏は言う。「まずいことになると、かなり事前に予想できていた事態だと思う」。
「率直に言って、火を見るより明らかだった。新聞を読んで、目が覚めていれば。不正選挙があったと信じ込んでいる人が大勢いると、分かっていたはずだ。その中には過激主義者がいて、暴力も辞さないと。『銃を持参しろ』と、堂々と呼びかけていたグループもあったのだから」
それでも、多くのアメリカ人が6日の光景に衝撃を受けた。ヴァージニア州在住の共和党支持者、ジェイムズ・クラークさん(68)もその1人だ。
「まったく衝撃的だった。まさかあんなことになるとは」と、クラークさんはBBCに話した。
しかし、予兆はもう何週間も前から出ていた。様々な過激主義者や陰謀論者たちが、選挙が盗まれてしまったと確信し、オンラインで相談し合っていたのだ。どうやって武装するか。そして暴力について。
捜査当局はもしかすると、こうした投稿は捜査に値するほど深刻ではない、あるいは具体的ではないと思ったのかもしれない。今となっては厳しい批判を受け、説明を求められている。
米連邦議会襲撃 参加者たちが撮影した内部の様子
バイデン次期大統領は1月20日に就任する。6日に比べて警備は「はるかに増強される」だろうと、チャートフ氏は言う。
それでも、ウェブ上の様々なソーシャルメディアやプラットフォームでは、6日以上に激しい暴力や妨害を呼びかける書き込みが続いている。
数百万、数千万もの人に陰謀論が拡散する原因となった、主要ソーシャルメディア各社に対しても、批判と説明責任を求める声が高まっている。
ツイッター社は8日夜、フリン元大統領補佐官と「クラーケン」弁護士のパウエル氏とウッド氏、そしてワトキンス氏らのアカウントを削除。そしてついにはトランプ氏自身のアカウントを永久凍結した(訳注:同社はさらに8日から12日までの間に、Qアノン関連の投稿ばかり繰り返す7万件以上のアカウントを凍結した)。
議事堂を襲撃した実行犯たちの逮捕と起訴も続いている。しかし、暴徒のほとんどはいまだにオンラインで現実とは乖離(かいり)した平行宇宙に生きている。そこは「代替の事実」(かつてトランプ大統領の側近だったケリアン・コンウェイ氏が使った表現)にあふれる、薄暗い地下の世界だ。
諦めたはずがないと。たとえば、あれは本人ではなく、コンピューターが作り出した「ディープフェイク」に違いないと。あるいは、もしかして大統領は捕らえられていて、あれはいわゆる「人質ビデオ」なのではないか、など(訳注:トランプ氏は12日、テキサス州で演説し、議会襲撃前の自分の演説に何も問題はなかったと主張している)。
トランプ氏は最終的に勝つはずだと、まだ信じている人が大勢いる。
ドナルド・トランプ氏本人がどうなろうと、米連邦議会の議事堂を襲撃した暴徒たちは、そう簡単には引き下がらない。
(追加取材:オルガ・ロビンソン、ジェイク・ホートン)